司法書士の徒然草

愛知県地方在住。司法書士のこととか。いとう司法書士事務所(http://www.itou-legal.com/)

商業登記規則の改正案

現在、司法書士にとても大きく影響する法令の改正が検討されています。

商業登記規則等の一部を改正する省令案

一般の方には分かりにくいお話しですが、基本的に会社の登記では、代表権のある取締役についてのみ、その人が本当に存在するのかどうか担保する書類(印鑑証明書)を提出することになっています。昔は、何も提出する必要はなかったんですが、存在しない人や有名人を代表取締役にしたりしたらしいので、このような取扱いになった経緯があります。

でも、平の取締役や監査役については、印鑑証明書の添付は求められていないんですね。
そうなると、会社に損害を与えた取締役に対して責任追及をしようとしたときに、取締役の住所が分からなかったり、存在しない人が取締役に就いていて、責任追及できないという問題が発生しました。

そこで上記の改正案が検討されている、というわけです。


さて、この改正案に対して、日弁連第二東京弁護士会は意見を表明しました。

「商業登記規則等の一部を改正する省令案」に関する意見書(日弁連)
商業登記規則等の一部を改正する省令案に関する会長声明(第二東京弁護士会)

概ね評価しているのですが、住民票の写しではなく、印鑑証明書を添付すべき、とのことのようです。

司法書士が登記申請を受託した時には、役員の就任登記については本人確認をしなければなりません。その際は身分証を提出してもらいますが、私の場合は、しばしば印鑑証明書をくださいとお願いしています。
役員変更の際、あるケースは印鑑証明書が必要だけど、あるケースは必要ない、とかなり細かくなってて、司法書士試験においてもその論点がしょっちゅう出題されます。私は受験時代から、「もういっそのこと全員印鑑証明書をつけりゃええやん」と思っておりましたが、専門家である以上、お客さんに過度の負担をかけさせてはいけません。この辺りは難しいところですが、商業登記規則が改正されれば、何も考えずにお取寄せをお願いできます。

さて、我らが司法書士会はどう意見表明しているかというと・. .

「商業登記規則等の一部を改正する省令案」に関する意見(PDF)

印鑑証明書の添付にすべきとは言っていませんが、「施行後の最初の再任にも住民票の写しの添付が必要」とか「清算人の就任にも必要」とか、さすが登記の専門家集団として細かいです。改正案では「辞任届に法人代表印が押印されたら、印鑑証明書の添付は不要」とあるところ、印鑑の管理の関係で、印鑑を提出した代表取締役等の意思によらない辞任届が作成される恐れがあるとして反対もしています。
そうなんですよね。代表者が法人代表印を、従業員に預けていることがあるんですよねえ。なんでか・・・。

また、ついでに「取締役等の氏名・住所変更のときや氏名・住所更正のときにも添付書類が必要」とも言っています。なるほど。

ここで一つ疑問が。

現在の改正案では、再任の場合、住民票の写しの添付は必要ありません。
一方、登記実務では、代表取締役等が再任する際に住所が変わっていても、「代表取締役の住所変更」⇒「代表取締役の就任」とする必要はなく、「変更後の住所で代表取締役の就任」とすることができます。
そうなると、存在しない人が登記されるということは防止できても、住所についての真正が担保できなくなる恐れがあり、責任追及の面でよろしくありません。虚偽の住所で再任の登記がされ、遡って正確な住所が分かつても、住所移転されて5年経過していたら、住民票の除票が取れなくなってしまいます。

また、平の取締役の住所は登記事項ではないため、住所変更したかどうかは分からないという事がありますね。これはまた別の問題かな?

何にせよ、この改正案は動向に注意していなければなりません。


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