司法書士の徒然草

愛知県地方在住。司法書士のこととか。いとう司法書士事務所(http://www.itou-legal.com/)

遺言執行者の遺言書上の住所と現住所が異なる場合

遺言執行者を登記義務者とする所有権移転登記を申請する際、遺言書にある遺言執行者の住所と印鑑証明書の住所が異なるときは、その変更証明書(住民票の除票とか)を添付する必要があります(登記研究435号より)。

〇要旨 遺贈により所有権移転の登記申請を遺言執行者と受遺者が共同でする場合、遺言執行者の資格を証する書面として添付された遺言書に記載された遺言執行者の住所が添付された印鑑証明書の住所と一致しない場合は、その変更を証する書面の添付を必要とする。

▽問 遺贈による所有権移転の登記を遺言執行者と受遺者とが共同でする場合に、遺言書に記載された遺言執行者の住所が添付された印鑑証明書の住所と一致しない場合(住所変更による不一致・誤記による不一致)でも、遺言書記載の遺言執行人の生年月日が一致すれば他に変更証明書等を添付する必要はないと考えるがいかがでしょうか?また、生年月日の記載のない場合は結論は変わるでしょうか?

◇答 生年月日が一致していても、住所の変更を証する書面を添付することを要すると考えます。


遺言者の相続人を遺言執行者にする場合には、続柄・生年月日・氏名で特定することが多いので、住所の問題は発生しませんが、第三者を遺言執行者に選任する場合には、このような事が起きることがあります。

さて、今日はそれが本題ではなくて、随分昔に、さらにイレギュラーな事があったことを書いていこうかと思います。


私がまだ独立していなくて、ある事務所でお世話になっていた時の話です。

清算型遺贈の遺言執行者に就任した弁護士さんからの登記申請の依頼を頂きました。清算型遺贈は「次の不動産は、これを売却して、売却代金から諸経費を差し引いた残金額を、〇〇に相続させる」と言ったものです。登記実務では、相続人名義に一旦相続登記を申請した後、不動産の買主に売却して所有権移転を申請します。その際、遺言執行者は登記の申請人になることができます(この当時は、改正不動産登記法が施行されて間もなく、遺言執行者による相続登記では、登記識別情報が発行されるのかどうか、問題がこじれました。この記事はまた後日)。

この時、遺言には弁護士さんが遺言執行者に選任されていましたが、なんと住所は「弁護士事務所の所在地」が表記されていました。しかし、不動産の買主に売却する際の所有権移転登記に遺言執行者が申請人となるときには印鑑証明書が必要となりますが、印鑑証明書は弁護士さんの自宅の住所になっております。これでは登記研究435号にひっかかりますが、この場合の変更証明書って一体・・・。

これは、困ったぞ・・・。

当時の所長は、弁護士事務所と自宅住所の繋がりを証明するものが必要とアナウンスして、取寄せてもらったのが、弁護士会の証明書でした(たしか、事務所所在地と自宅を証明するもの)。これを添付して申請は無事受理されたことがありました。

果たしてこの取り扱いが正式なものなんでしょうか。一度しかこのような案件に出会った事がありませんし、長年疑問に思ってネットで検索してもヒットしないんですね・・・。

以上、「不動産登記 先例・判例 要旨集」を見ていて、ふと思い出したので書いてみました。
ちなみに、新日本法規の「不動産登記 先例・判例 要旨集」にはこの登記研究は載っていません。それどころか、死んでいる先例・見解が載っている。むー!この要旨集はそういうものなのぁ?!ちょっと今度問い詰めてみようかと思います。


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