随分前の話なのですが、ある不動産会社の売買について相談を受けました。
不動産の売買ではなく、不動産会社の売買です。
相談者は、不動産会社のオーナーで100%株式を保有していました。
一方、その会社の取締役・代表取締役は、オーナーではなく、別の方でした。いわゆる雇われ社長というやつですね。
会社自体を売買するときには、税金の滞納はないか、これまでの事業はどういう状況だったのか等、会社の資産価値・権利関係を調査して、株式の譲渡契約をして…などという流れになりますが、それらの打ち合わせの中でオーナーは、「会社の実印と印鑑カードは代表取締役じゃなくて、私(オーナー)が預かっているから、大丈夫だよ(代表取締役が勝手に動けないよ)」とおっしゃっていました。
そのとき、私の頭の中でハテナマークが。
会社の代表印ってそもそも誰のものなんでしょう?
話からすると、そのオーナーさんは発言の意図するところは「会社の代表印は会社のもので、私が預かっているから、代表取締役は使用できない(好き勝手契約できない)」ということと思われます。
だけど、会社の代表印って、代表取締役がその印鑑を押印すると「確かに私がこの会社を代表して書面に押印しましたよ」という意味を持ち、あくまで代表取締役のものなんですね。
「代表取締役のものを、オーナーが預かってるんだから、好き勝手できないんじゃないの?」という声が聞こえてきそうですが、代表取締役以外の者が会社代表印を預かっても、完全に代表取締役の行動を制限できるわけではありません。
なぜなら、会社の代表印は、いつでも改印することができ、その時に必要になるものは、代表取締役の印鑑証明書と個人の実印のみです。
ですので、オーナーの手元に会社の代表印があっても、現代表取締役は、新しい代表印を作って登記所に行き、改印届を提出すれば、オーナーの手元にある代表印は代表印ではなくなってしまうわけです。
印鑑カードはどうか?
印鑑カードについては廃止届と印鑑カード交付申請書を提出すれば新しい印鑑カードがもらえます。
ですので、いくらオーナーが預かってても、やろうと思えば、代表取締役は印鑑と印鑑カードを紛失扱いにして、新しく新調できるんです。そう思って、このことをオーナーに話しましたが、「そんなワケはない」「代表印は会社のモノだ」という論理でした。
いや、僕は別にいいんですけどね。その会社のオーナーじゃないから。
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