司法書士の徒然草

愛知県地方在住。司法書士のこととか。いとう司法書士事務所(http://www.itou-legal.com/)

休眠担保権抹消のとき除権決定って意外と使えない?

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いとう司法書士事務所−休眠担保権抹消

以前、休眠担保権抹消のお仕事をさせて頂いた時のお話しです。
随分前に、支払いを止めていて、被担保債権の消滅時効が完成しているので、担保権が抹消できないかという相談でした。


休眠担保抹消を考えるとき、まず①除権決定によるか(70条1項・2項)、②被担保債権が消滅したことを証する書面を添付する方法(70条3項前段)でいくか、③債権額・利息・損害金を供託するか(70条3項後段)、を検討するものと思われます。これら①〜③を検討する時に、まず第一に検討するのが「権利者が行方不明になっているかどうか」という点ですが、これは難なくクリアできました。

さて、上記①〜③のどれを選択しやすいか?

②は完済証明書など完全に資料がそろっている場合の手続きですので、なかなかそのような好条件はそろいません。③は債権額は少ない場合(明治時代の担保権とか)にメリットがあります。しかし昭和時代の担保権になるとなかなか③をとる事が難しいです。

となると①の除権決定がベストなのかなぁと

…そう思ったんですが…

実は、除権決定も選択することができませんでした…(泣)

除権決定の根拠である不動産登記法70条を見るとこうあります。

登記権利者は、登記義務者の所在が知れないため登記義務者と共同して権利に関する登記の抹消を申請することができないときは、非訟事件手続法第九十九条 に規定する公示催告の申立てをすることができる。

「登記の抹消をすることができないとき」が要件ですから抹消の対象となる権利が実体法上不存在であるか消滅していなければなりません。そうでなければ、抹消登記請求権が発生しませんから。

となると、公示催告の添付書類として権利の消滅又は不存在を証明する証拠が必要となります。これは完済証明書や解除証書などが代表例ですが、相談された事件は被担保債権の消滅時効完成ですから、何かなぁと考えたわけです。多分「時効期間の起算点を証明するもの」と「消滅時効援用の意思表示をしたことを証明したもの」が必要なんじゃないかとそう考えました。

それじゃあ、裁判所に問い合わせるかぁと思った矢先、はて?待てよ?と。

訴訟手続きでは、訴状に消滅時効援用の意思表示を記載して、訴状が到達すれば、援用の効果が得られます。じゃあ、公示催告手続き上に意思表示を記載して消滅時効援用の効果が得られるんでしょうか?というかまだ消滅時効の援用をしていないため、実体的な権利変動が生じていないことになります(時効援用の不確定効果説)。つまり、まだ権利が消滅していないことになります。

あれ?と思い裁判所に問い合わせてみると、やはり公示催告の手続き上に、消滅時効援用の意思表示はのっけられないと。意思表示の公示送達をしてから公示催告をすることになり、それなら訴訟を提起した方がいい、というアドバイスを貰いました。なるほどぉ。

この件以来、ときどき休眠担保の相談は受けますが、一番多いのが、被担保債権の消滅時効が完成している事例であることを考えると、なかなか除権決定を選択することもない?なんて最近考えております。そもそも公示催告の手続き上、「権利の消滅又は不存在を証明する証拠」が必要となると、②被担保債権が消滅したことを証する書面を添付する方法(70条3項前段)との差異があまり感じないんですが、どうなんでしょう…?

この件は、結局、訴訟をしました。ただ、訴訟手続きの中で権利者の所在が分かり、管轄が移送され、1年ほどかかって解決しました。
休眠担保権は、やりがいがありますが、難しいです>_<

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休眠担保権をめぐる登記と実務

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