少し前に話題になった↓の会社はご存知ですか?
「NEET株式会社」に賛否渦巻く 会社は「誰のもの」なのか…
今日フジテレビでこの会社のニュースをやっていましたけど、設立のニュースを見た時には、「うわー、登記とか会社の運営が大変だなぁ」と思って、その後の動きを注視していましたが、特に目立った動きを耳にしません。新たに役員を選任したくらいです。そして、他の人のブログなど(特に司法書士)を見ると、批判的は記事ばかりです。まあ、批判したくなる気持ちもわかりますが、私は、司法書士の純粋な知的好奇心として、一体どのように機関設計をしたり、定款を規定したら良いかと思っていました。
そこで私がもし、NEET株式会社のような大人数の株主兼取締役の会社を設立したいとお願いされたら、どのような定款を作った方が良いか、無責任に、そして勝手に考えてみようかと思います(ちなみに私は企業法務はあまり得意ではありませんので、間違っていたり、考えが浅はかだったりします…)。
取締役会の設置・任期・資格
まず取締役が100人を超えてしまうと、取締役会を開くことは現実的に不可能です。書面決議をするという方法がありますが、これには取締役全員の同意が必要になります。したがって、取締役会は設置しない方が得策と考えます。
取締役会非設置会社なら、業務の執行は取締役の過半数で決定できますし、合理的な決定方法なら定款によって別段の定めをすることも可能です。取締役会を設置するよりも柔軟に対応できるのでは…?と思ったりします。
次に任期は、私なら「選任後十年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時」までとします。何といっても、2年に一度、改選手続きをするのは手間がかかりすぎます。
また、「雇われたらニートではなくなってしまう」ということで取締役になっているのだから、取締役の資格として、「他で雇用・委託・請負関係が無い事。個人で事業を営んでいない事」を要件にしておく必要があるんじゃないかと思います。ここは競業避止義務とも絡んできそうな問題です。
取締役の責任について
会社法423条により、役員等は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負います。しかし、株主=取締役なので、「自分だけ任務を怠りその結果損害が生じる」という事態は考えにくいです(たくさんの取締役が任務懈怠になるんじゃないかと)。そして、株主(=取締役)はそのような会社の様態を知って株主となり取締役となっています。つまり経営と所有が全く分離していません。したがって、会社に対する任務懈怠責任を免除することはあまり考えなくもよいのかもしれません。それに、責任を限定しようにも、定款に定めて取締役の過半数の同意が必要になり、株主=取締役の会社ですから、これでは会社法425条の場合とあまり変わらない気がします。
ただ、怖いのは第三者に対する責任です。会社法429条により、役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負います。また、会社法430条により、役員等が株式会社又は第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合において、他の役員等も当該損害を賠償する責任を負うときは、これらの者は、連帯債務者となります。
したがって、自分が取締役としての責務を果たさなかった場合には、賠償責任を負う可能性がでてきますが、これについては定款による定めというよりも、このような特殊な形態の会社の中で、どうやったら取締役の職務を遂行できるか、という組織全体のハードの問題の気がします(手間と費用がかかりそうですが)。
なお、NEET株式会社のHPを見ると、社長が日直で日替わりで変わるそうです。しかし、会社法には「株式会社は、代表取締役以外の取締役に社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該取締役がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負う。」とあり、これに引っかかりそうですので、私なら直ちに廃止します。
株式について
まず、株式を簡単に譲渡されては困るので、譲渡制限規定は絶対条件です。また株主=取締役でなければならない、とするならば、取締役は株主でなければならないという資格要件をつけ、取締役を退任したら、株式を買い取ることができる、という取得条項を付ける必要があるかと思います。
また、株主が死亡して、ニートではない相続人に株式が承継されてもいけません。したがって、相続人に対する売渡請求ができる旨を定めておく必要があります。