司法書士の徒然草

愛知県地方在住。司法書士のこととか。いとう司法書士事務所(http://www.itou-legal.com/)

こんな会社売買に関する相談が来たらどう答えますか?

相談事例

自分の会社の経営権を友人にあげたんだが、その後連絡が取れなくなってしまった。信頼関係がなくなったので、返して貰いたい。弁護士に相談したら、代表取締役を友人から自分に戻せばいい、と言われた。

こんな相談を受けたら、何を聞き取り、何を確認して、どのような手続きをしたらいいんでしょうか?


実は、このような相談を、随分昔に受けたことがあります。
会社売買は数件しかやったことがないため、あまり詳しい方ではないのですが、何が問題かというと、「自分の会社の経営権を友人にあげた」「代表取締役を友人から自分に戻せばいい」という点です。

果たしてこの「経営権をあげた」というのは、株式の譲渡がなされたと考えるべきかどうか・・・・。

株式会社というのは、取締役が会社を経営し、株主が会社を所有しているわけで、経営と所有が分離されているはずです。そうなると「経営権をあげた」というのは、「自分が取締役を降りて友人に取締役を譲った」とも解釈できます。そうなると弁護士さんのアドバイスのように「代表取締役を友人から自分に戻せばいい」という方法も良さそうです。

しかし「経営権をあげた」というのが、全株式を譲渡したという当事者の意識だとしたら、弁護士さんのアドバイスは無意味となります。

この時、私が、最初に確認したのは、「契約書があるか?」「株式譲渡に関する株主総会議事録などはあるか?」「”会社の経営権をあげた”というのは株式の譲渡の意識があったか」という点でした。

聞くと「契約書はない。定款や会社の資料は渡した」「特に議事録はない」「株式の譲渡の意識は特になかった」とのこと。

聞けば聞くほど、曖昧な事情です。

結局こう答えることにしました。

代表取締役を交代させるには、株式の所有権がどちらにあるかが重要です。「経営権をあげた」というのは、果たして株式の譲渡が伴っているかどうか私では判断できません。そのため、全株式を所有しているものとして、取締役に就いている友人を無視して手続きをすることはできません。
 友人の居所をさがして、自分に株式がある旨及び株主として会社法297条による株主総会の招集を請求する旨の手紙を出し、相手方の反応を見ていってから解決を図るという手順でよければ、詳しい相談に乗ります。ですので、友人を無視して勝手に代表取締役を交代させることはできません。勿論、私の手順で手続きを踏めば、もめると思います。」

結局、一度相談した弁護士にもう一度相談するということで、それっきりとなりました。

そもそも、現取締役である友人を無視して、代表取締役を交代させた旨の議事録を作成したとしても、議事録作成者としての実印・代表印の押印や印鑑証明書の添付がクリアできるのか疑問です。もしかしたら、株主が株主総会の目的事項を提案してみなし決議をすれば、友人を無視して議事録を作れるのかもしれませんが、上記のような不明確な事情がある中で決行するわけには行きません。

何とも解決策がパッと出てこない事案でした。果たして私の対応が正解だったのかどうかも自信がありませんでした。

おしまい。

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