司法書士の徒然草

愛知県地方在住。司法書士のこととか。いとう司法書士事務所(http://www.itou-legal.com/)

【最高裁判例】企画旅行の添乗員の残業代請求

1週間ほど前のことですが、最高裁にて残業代請求の判決がなされました。


募集型の企画旅行の添乗員の業務につき,労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たらないとされた事例

業務の性質,内容やその遂行の態様,状況等,本件会社と添乗員との間の業務に関する指示及び報告の方法,内容やその実施の態様,状況等に鑑みると,本件添乗業務については,これに従事する添乗員の勤務の状況を具体的に把握することが困難であったとは認め難く,労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるとはいえないと解するのが相当である。

事件の概要として、旅行会社では「事業場外のみなし労働時間制」を採用していました。

「事業場外のみなし労働時間制」とは、労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、原則として、所定労働時間労働したものとみなす、というものです。

したがって、裁判では、この「労働時間を算定しがたいとき」に該当するかどうかがよく争点にされます。

本事件では、募集型の企画旅行の添乗員さんで、しかも派遣社員だったようでです。
そして「労働時間を算定しがたいとき」の該当性について…


①派遣先である本件会社は,就業日ごとの始業時刻,終業時刻等を記載した派遣先管理台帳を作成し,これらの事項を派遣元である上告人に通知する義務があった

②出発日の7日前頃にツアー参加者に送付される最終日程表には,発着地,交通機関,スケジュール等の欄があり,ツアー中の各日について,最初の出発地,最終の到着地,観光地等の目的地,その間の運送機関及びそれらに係る出発時刻,到着時刻,所要時間等が記載されている。

③会社は,添乗員に対し,国際電話用の携帯電話を貸与し,常にその電源を入れておくものとした上,添乗日報を作成し提出することも指示している。

④添乗日報には,ツアー中の各日について,行程に沿って最初の出発地,運送機関の発着地,観光地等の目的地,最終の到着地及びそれらに係る出発時刻,到着時刻等を正確かつ詳細に記載し,各施設の状況や食事の内容等も記載するものとされており,添乗日報の記載内容は,添乗員の旅程の管理等の状況を具体的に把握することができるものとなっている。

⑤添乗員は,目的地や宿泊施設の変更等のようにツアー参加者との間で変更補償金の支払など契約上の問題が生じ得る変更や,ツアー参加者からのクレームの対象となるおそれのある変更が必要となったときは,本件会社の営業担当者宛てに報告して指示を受けることが求められている。


…以上のような業務の性質、内容やその遂行の態様であったようです。

私の扱った事案でも、携帯電話を持たせており、外回りの報告や指示を受けていたため、「労働時間を算定しがたいとき」には当たらない、というものがありました。

残業代未払いの会社では、上記の様に「事業場外のみなし労働時間制」を都合よく解釈して、従業員に残業代を支払わない、というケースが良くあります。

お悩みの方は、ご相談ください。

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